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ほっと一息 人生コラム
vol.42 D.J.サリンジャー「ライ麦畑でつかまえて」を読んで (野崎 孝 訳) 大人のインチキは、社会生活を営むための潤滑油ぐらいに思っている僕が、インチキを嗅ぎ分けてその欺瞞性を暴こうとするホールデン少年にどこまで入っていけるか、この驚異的なベストセラーを初めて読んだ。 高校を退学させられた16歳の少年、ホールデン・コールフィールドが、ニューヨークの街をふらついた時の、悪夢のような3日間の追憶が、湧き上がるように語られていた。一人称で軽快に語る17歳になった彼の言葉は、神経症的で、独特な重苦しい「孤独感」と「優しさ」に満ちていた。 ホールデンは、口は達者だけどコニュニケーションは下手だった。すぐに嘘をつくし、ヘビースモーカーで女好き。大人はみんな敵で、学友とも喧嘩ばかり。一方で、公序良俗的な大人の言葉は嘘っぱちだと見抜き、これを暴こうとする清さに心地よさを感じた。「ステキ」という言葉にインチキなにおいをかぎとる臭覚に、16歳を感じた。 16歳のころの僕はどうだっただろうか。多感な思春期特有の「苦悩」を覚えている。 ...
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11月4日読了時間: 2分


ほっと一息 人生コラム
vol.41 太宰治「グッド・バイ」を読んで 著者が自死の直前まで執筆していた、朝日新聞連載の未完の小説。これがまたコミカルな作品で、続きが読みたなる内容だった。あらすじ主人公は、34歳、雑誌編集長の田島周二。闇商売で、しこたま、もうけている。彼は愛人を10人近く養っている...
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10月1日読了時間: 2分


ほっと一息 人生コラム
vol.40 梶井基次郎「ある心の風景」を読んで 梶井基次郎の憂鬱は清い。ぐっと深く内面を見つめ、ふっと浮かんだ気持ちを風景に溶かして描く。その詩情豊かな感覚に引き込まれる。 『檸檬』も『城のある町にて』も、自分の気持ちをそこにある風景と対比させながら、静かに描く。ずっ...
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9月4日読了時間: 2分


ほっと一息 人生コラム
vol. 39太宰治「火の鳥」を読んで 人生をやり直そうとする女性の物語だった。この作品、太宰の、心中して自分だけが生き残ってしまった経験が動機となっているように思う。しかし、未完のまま終わっている。 <内容> 銀行を襲った須々木乙彦というテロリストが、カフェの女給・高...
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8月11日読了時間: 2分


ほっと一息 人生コラム
vol.38 遠藤周作「海と毒薬」を読んで あまりに暗い色調ばかりで、どんよりとした気分のまま読み終わった。 作品は、戦争末期、大学病院で実際に起きた米軍捕虜の生体解剖事件(いわゆる相川事件)を題材にしたものだった。あらすじについてはウィキペディア「海と毒薬」に託す。...
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7月15日読了時間: 2分


ほっと一息 人生コラム
vol.37 ゲーテ「若きウェルテルの悩み」を読んで 読み終わり、本を置き、目を閉じる。心にしっくりしない疑問が浮かぶ。 なぜウェルテルは、自殺を決意したのだろうか。 人を愛することと死がどうして結びつくのだろうか。 ...
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6月3日読了時間: 3分


ほっと一息 人生コラム
vol.36 ショーロホフ「人間の運命」を読んで 1956年にソビエト連邦共産党機関紙に掲載された、ノーベル文学賞作家ミハイル・ショーロホフの作品。タイトルにつられて初めて読んだ。 あらすじ 第二次世界大戦が終わって初めての春の日、幼い少年を連れたソ連のトラック運転手ア...
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5月7日読了時間: 3分


ほっと一息 人生コラム
vol.35 谷崎潤一郎「刺青」を読んで 惚れ惚れするような文章が、奇妙な内容をさらに際立てていた。 谷崎潤一郎をそんなに読んではいないけれど、どれも浮かんでくる映像は、どこか妖艶で耽美的な、それでいて狂気じみている。この作品にも、肉体を傷つける残忍さと自虐的な快楽...
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4月3日読了時間: 3分


ほっと一息 人生コラム
vol.34 向田邦子「思い出トランプ」を読んで ポンポンと歯切れのいい言葉が映像になる。感覚の表現や感情の言葉にも共感する。懐かしい風景にうなずく。昭和のブラウン管が浮かぶ。オノマトペが軽妙で、音までが聞こえてきそう。100年前のまどろっこしい文章ばかりを読んでいたので、...
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4月3日読了時間: 2分


ほっと一息 人生コラム
vol.33 サン=テグジュペリ「夜間飛行」を読んで(二木麻里訳) この犠牲はきっと未来に役立つ。 いま生まれた赤ちゃんがいる。いま死んでいくおじいちゃんもいる。おじいちゃんが頑張ってきたことはきっと誰かの役に立つ。いま生まれた赤ちゃんの役に立つ。ずっと前から社会はそう...
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2月13日読了時間: 3分


ほっと一息 人生コラム
vol.32 大江健三郎「奇妙な仕事」を読んで 大学病院に実験用として飼われている犬150匹を撲殺するアルバイトの話。 この小説は、ノーベル文学賞作家大江健三郎が初めて世に出した作品で、1957年5月東京大学新聞に掲載されたとのことだった。 ...
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2月13日読了時間: 2分


ほっと一息 人生コラム
vol.31 チェーホフ「かもめ」を読んで(神西清訳) 本文ずっと若いころ、何度かアングラ風の演劇を見たことがある。小劇場から伝わる印象はどれも暗かった。人間の心の奥にある葛藤を誇張的に独白したものや、理不尽な社会を描きながら誰かに共感を求めるように手を広げ、薄暗い舞台に...
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2024年11月26日読了時間: 3分


ほっと一息 人生コラム
vol.30 森鷗外「青年」を」読んで 二十歳の頃の自分を思い出す。 人間関係の不器用さから、女性にどう見られるかばかりを気にしていた。大きな主語で語ることで、正直な自分の気持ちを隠していた。思い通りにならない自分が悔しくて、情けなく歩いていた。 ...
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2024年11月26日読了時間: 2分


ほっと一息 人生コラム
vol.29 太宰治「トカトントン」を読んで 幻聴の「トカトントン」。どこからともなく聞こえてくる「トカトントン」という金槌かなづちの音。発狂ギリギリまで追い詰められた26歳の復員青年の耳に響く「トカトントン」。創作とか仕事とか恋愛とか、何かやる気が起きると必ず「トカトント...
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2024年10月9日読了時間: 2分


ほっと一息 人生コラム
vol.28 川端康成「千羽鶴」を読んで 名作と名高いこの小説、伝統的な陶器の美しさを絡めながら、愛と罪と死が漂う作品だった。これぞ川端作品だと感じながら、繊細で美しい文章と描かれた世界を楽しんだ。 <内容>主人公、三谷菊治は25歳ぐらいの独身の会社員。父と母を相次いで...
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2024年8月29日読了時間: 3分


ほっと一息 人生コラム
vol.27 西村賢太「苦役列車」を読んで vol.27 西村賢太「苦役列車」を読んで 西村賢太が中学卒業後の日々の暮らしをもとに書いた小説。大半が事実だという。2011年の芥川賞受賞作。 <内容>主人公は北町貫多、19歳。中学卒業後、日雇の港湾人足仕事につく。友...
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2024年8月15日読了時間: 3分


加藤政実のNEWSコラム(2024年7月)
「「J・ロバート・オッペンハイマー」その光と影」 どうしても映画館で見たい映画があった。「オッペンハイマー」クリストファー・ノーマンの劇場長編作品の12本目。いつも通り本人が脚本を書き制作監督を行う。本年度アカデミー賞最多7部門受賞作品である。ほぼ10年ぶり、シネコンでラス...
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2024年7月9日読了時間: 5分


ほっと一息 人生コラム
vol.26 織田作之助「夫婦善哉」を読んで 大正から昭和初期の大阪を舞台とした、意志の弱い男柳吉としっかり者の女蝶子の物語。「みんな貧しくて、泣いて笑ってけんかして、人と人とが近すぎるほと近い時代」(1955年豊田四郎監督DVDより)...
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2024年7月9日読了時間: 2分


ほっと一息 人生コラム
vol.24 シェイクスピア「リア王」を読んで 「俺はなんて愚かなんだ。あの時、あいつ(ケント伯爵)の話を聞いていればよかった。取り返しのつかないことになってしまった。今思えば、娘たちは私を愛していなかったのだ。それどころか私から全てを奪うことしか、考えていなかったのだ。」...
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2024年5月31日読了時間: 3分


ほっと一息 人生コラム
vol.24 宇野千代「おはん」を読んで 二人の女の間で揺れる大変身勝手な男心を描いた物語。人情味あふれる上方言葉の文章を楽しみながらも、古い時代の女の献身的な愛に戸惑いながら読む。 <内容>主な登場人物は3人。語り手の懺悔(ざんげ)のように自身の行いを情けなく語る男「私」...
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2024年5月1日読了時間: 2分
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